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一歩先の熱中症対策

はじめに

ドライバーさんは、エアコンの効いた車を運転していても、炎天下での乗り降り、駐車後の高温になった車内など、短い時間に何度も暑さへさらされます。さらに、長時間同じ姿勢で運転していると、自分の体調の変化に気づきにくくなることもあります。

弊社のドライバーさんは平均年齢が65歳で、1日の平均運転時間はおよそ4時間程度です。

65歳を過ぎたからといって、全員が暑さに弱いわけではありません。しかし、年齢とともに喉の渇きを感じにくくなったり、汗をかいて体の熱を逃がす反応が遅くなったりする傾向があります。高血圧や糖尿病などの持病、服用している薬の影響にも注意が必要です。

だからこそ、熱中症対策を本人の「我慢」や「気合い」に任せてはいけません。

一般的によくいわれる「水を飲む」「エアコンを使う」だけでなく、朝に何を食べるか、どこを冷やすか、どんな靴を履くかまで、もう一歩踏み込んで考える必要があります。

この記事では、1日約4時間運転する65歳前後のドライバーを想定し、すぐに取り入れやすい対策を、その仕組みとともにわかりやすくご紹介します。

1.一番おすすめの食事は「おにぎり+みそ汁」

熱中症を防ぐ特別な食べ物が、一つだけ存在するわけではありません。

ただし、あえて最も実用的な組み合わせを挙げるなら、

おにぎり1~2個+みそ汁+卵または納豆

です。

人は睡眠中にも汗や呼吸で水分を失うため、起床時にはすでに水分が不足しがちです。ご飯とみそ汁なら、水分、塩分、糖質をまとめて補えます。厚生労働省も、暑い場所で働く人にとって朝食は重要であり、ご飯には水分が多く含まれ、朝食によって汗をかく準備もしやすくなると説明しています。

仕組み:
水分は汗の材料、塩分は体内に水分を保つために必要です。さらに、ご飯の糖質は運転中の集中力を保つエネルギーになります。

梅干し、塩飴、バナナ、スイカなども補助にはなりますが、単品では水分・塩分・エネルギーのすべてを補えません。まず朝食を食べることが基本です。

さらに一歩進めるなら「アイススラリー」

特に暑い日の出発前には、細かな氷と飲料が混ざったアイススラリーを活用する方法もあります。

仕組み:
氷が体内で溶けるときに熱を吸収するため、体を内側から事前に冷やせます。厚生労働省も、作業前の身体冷却の一つとして紹介しています。

ただし、経口補水液を毎日の飲料代わりにするのはおすすめできません。経口補水液は脱水時に使う病者用の飲料で、日常的な大量摂取は血圧や心臓への負担が懸念されます。

高血圧、心臓病、腎臓病、糖尿病がある方や、水分・塩分を制限されている方は、主治医の指示を優先してください。

2.暑い車に乗ったら、まず「熱気」を外へ出す

高温になった車内で、いきなり窓を閉めたままエアコンを使うと、車内にたまった熱気を冷やすのに時間がかかります。

乗車直後は窓を開け、エアコンを外気導入にして熱気を外へ出します。車内の熱気が抜けたら、窓を閉めて内気循環へ切り替えます。JAFの実験でも、この方法が車内を効率よく冷やせるとされています。

仕組み:
50℃近い空気をそのまま冷やすより、先に熱い空気を外へ追い出し、比較的温度の低い空気へ入れ替えた方が早く冷えます。

「エアコンをつけたから、すぐ出発」ではなく、車内が落ち着いてから本格的に運転を始めることが大切です。

3.ネッククールリング使用する

ネッククールリングは、運転中の暑さや不快感を軽減する補助用品としては便利です。

100円均一ショップなどで、比較的安価に手に入ります。

可能であれば2本用意し、

  • 1本を着用する
  • もう1本をクーラーボックスで冷やす
  • 冷たさがなくなったら交換する

という使い方が現実的です。

ただし、「首が冷たいから体も安全」と判断してはいけません。

首を冷やす研究では、本人は涼しく感じても、体の中心部の温度が十分に下がらない場合が確認されています。高齢者を対象にした研究でも、首を冷やす方法だけでは深部体温の上昇を抑えられませんでした。

仕組み:
首には冷たさを感じるセンサーが多いため、冷やすと「涼しい」と感じやすくなります。しかし、冷やしている面積が小さいので、体全体にたまった熱を十分に取り除けるとは限りません。

ネッククールリングは、エアコン、水分補給、休憩と組み合わせる道具として使いましょう。

4.夏の標準装備を「通気性のよいドライバーシューズ」にする

運転中、足はほとんど靴の中に入ったままです。革靴や通気性の低い靴では、熱と湿気がこもります。

夏場は、次の条件を満たす靴がおすすめです。

  • 甲の部分がメッシュ素材
  • かかとが固定される
  • 靴底が厚すぎず、曲がりやすい
  • ペダル上で滑りにくい
  • 吸汗速乾性のある靴下と組み合わせる

高齢者を対象にした研究でも、通気性の高いメッシュ素材の靴は、靴の中の温度と湿度の上昇が小さく、快適性が高いことが確認されています。

仕組み:
靴の中に湿気がたまると、汗が蒸発できません。メッシュ素材から熱と湿気を逃がすことで、足元の蒸れや不快感を軽減します。

これは体全体を冷やす主役ではありませんが、長時間運転時の暑さと疲労を減らす補助対策になります。

なお、涼しいからといって、サンダルや厚底靴で運転するのは危険です。サンダルは脱げたりペダルに引っかかったりしやすく、厚底靴は踏み込み加減が分かりにくくなります。

弊社で取り入れたい「おすすめルーティン」

タイミング 実施すること
出勤前 朝食を食べたか確認する。飲み物、ネッククールリング、予備のリングを用意する
乗車時 窓と外気導入で熱気を出し、車内を冷やしてから本格的に運転する
中間休憩 安全な場所に停車して水分を取り、可能であれば手と前腕を10分冷やす
休憩後 ネッククールリングを交換し、頭痛、吐き気、強いだるさがないか確認する
帰社時 少しでも普段と違う体調があれば報告する。翌日のために冷却用品を再準備する

「いつもと違う」と感じたら、運転を続けない

次の症状があれば、熱中症の可能性があります。

めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、強いだるさ、足がつる、返事がおかしいなどです。

症状が出たら、まず安全な場所に停車し、エアコンを使用して会社へ連絡します。体調不良者を一人にしてはいけません。頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害、高体温などがある場合は、ためらわず救急車を呼び、到着まで体を冷やします。

まとめ

熱中症対策は、特定の食べ物や冷却グッズ一つで完成するものではありません。

朝食で水分・塩分・エネルギーを補う。
車内の熱気を先に逃がす。
ネッククールリングは使用する。
夏は通気性のよい靴を選ぶ。

「まだ運転できる」ではなく、「普段と違ったら、そこで止める」

我慢ではなく、仕組みで体と安全運転を守りましょう。

株式会社カノン・エージェンシー
代表取締役 青木 淳