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後退時のヒューマンエラーを防ぐ

後退時の運転は、視界が限られ、最もヒューマンエラー(人の注意や心理状態によるミス)が起きやすい場面です。わずかな「見落とし」や「油断」、「焦り」が重大な事故につながることもあります。これらの多くは車両トラブルではなく、ヒューマンエラーに起因しています。
そこで今月は、心理的な側面から「後退時事故を防ぐための3箇条」を考えてみましょう。

第1条「慣れた場所ほど、初心に戻る」

毎日の送迎では、同じルート・同じ駐車場を繰り返し利用するため、注意が自動化しやすくなります。この「慣れ」が油断を生み、危険の察知が遅れる要因になります。心理学では、これを「習慣化による注意の低下」と呼びます。

○対策ポイント:
後退前にドアを開けて一度後方を直接確認する。たとえ5秒でも、“実際に見る”ことで脳が状況を現実として捉え直し、「慣れによる油断」を断ち切ります。

第2条 「焦りを感じたら、一度止まる」

乗員を無事に送り届けた安心感や、次の予定への意識から「早く終わらせたい」という焦りが生じることがあります。この焦りは注意力の分散を招き、見落としや誤操作を増やすことがわかっております。注意には限界があり、焦りが判断精度を下げることが指摘されています。

○対策ポイント:
焦りを感じたらその場でいったんブレーキを踏み直し、5秒止まる。この「5秒停止」で焦燥感が沈み、状況判断を取り戻せます。動きながら考えるのではなく、「止まって確認」が安全の第一歩です。

第3条 「心の疲れ」と注意の欠如

特に朝の混雑時間帯や午後の疲労時には、判断スピードが落ちることがわかっています。心理学では、人の注意力は“有限のリソース”であり、疲労・睡眠不足・ストレスで簡単に消耗します。心理学では、集中力の低下と事故リスクの増加が関連することが明らかになっています。
疲れていると、確認の「つもり」や「思い込み」が増え、危険に気づけなくなるのです。疲労やストレスは「見落とし」を増やし、「あれ?と思った時にはもう遅い」状態を招きます。
○対策ポイント:
出発前に「今日は集中できているか」を自分に確認する。
集中が切れていると感じたら、短い深呼吸や伸びをして頭をリセット。
体調と集中を整えることも、立派な安全運転の一部です。

まとめ

後退時の事故は、技術の巧拙よりも、「心の状態」によって左右されます。
慣れた環境では注意が自動化し、焦りは判断を鈍らせ、疲労は危険の察知を遅らせます。
これら3つの心理要因―「慣れ」「焦り」「疲れ」は、誰にでも起こりうる自然な人間の反応です。
だからこそ、「自分だけは大丈夫」と思わず、毎回リセットする姿勢が安全を守る鍵になります。
安全運転とは、単に「事故を起こさない運転」ではありません。
それは、自分の心の動きを観察し、少しの違和感に気づく力でもあります。
慣れを自覚したら一度確認し、焦りを感じたら止まり、疲れを感じたら休む――
この3つの“立ち止まる行動”が、最も確実で現実的なヒューマンエラー対策です。

1.慣れた場所ほど、初心に戻る
2.焦りを感じたら、一度止まる
3.心の疲れに気づき、整える

人の命と笑顔を守るのは、一人ひとりの「ほんの数秒のゆとり」です。
今月も安全運転を心がけましょう。

株式会社カノン・エージェンシー
代表取締役 青木 淳