
高速道路における逆走事故〜背景と対策を考える
1.はじめに ~高速道路での逆走事故の現状~
高速道路における逆走事故は、発生件数こそ少ないものの、死亡事故に至る割合が非常に高い重大な問題です。
警察庁の統計によれば、高速道路上で発生した逆走事故による死亡率は、通常の交通事故の約10倍に達しています。
特に夜間では発見や回避が難しく、被害が拡大しやすい傾向にあります。
では、なぜ逆走事故は起きるのでしょうか。
一般的に、次のような要因が挙げられています。
【逆走事故の主な原因】
• インターチェンジやサービスエリアでの進行方向の誤認
• 高齢による認知機能の低下
• 飲酒や体調不良による判断力の低下
• ナビゲーションシステムの誤誘導
• 運転経験の少なさや疲労による注意力低下
こうした要素が単独、または複合的に関与し、深刻な事故を引き起こしています。
2.今回の東北道逆走事故について(2025.4.28 現在の情報)
2025年4月26日夜、栃木県那須塩原市の東北自動車道上り線で、逆走による重大事故が発生しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250428/k10014791431000.html
一台の乗用車がインターチェンジ付近から逆走を開始し、約2.7kmにわたって走行した末、追い越し車線上で対向車と正面衝突。その影響で近くを走行していた車両も巻き込まれ、さらに渋滞列の最後尾には大型トラックが追突し、多重事故へと発展しました。この事故により、3名の方が命を落とし、10名が重軽傷を負うという、極めて痛ましい結果となりました。
現場には急ブレーキの痕跡がほとんど見られず、逆走中に適切な回避行動が取られなかった可能性も指摘されています。
3.逆走事故を防ぐために ~本当に必要な対策とは~
逆走事故は、単なる「気をつけよう」という意識だけでは防げません。
一瞬の錯覚、一瞬の判断ミスが、重大事故に直結するからです。
だからこそ、以下のような対策が必要です。
【個人レベルで本当に必要な対策】
• 疲労時・体調不良時は「無理せず運転を断念する」勇気を持つ
• ナビに頼りすぎず、「標識と景色を読む力」を養う練習をする
• 高齢ドライバーは、自己判断に頼らず客観的な運転チェックを定期的に受ける
【企業・組織レベルで本当に必要な対策】
• 夜間走行時には「渋滞末尾でハザード点灯」を必須ルールにする
• 点呼時に「一言対話方式」で体調や認知力の変化を見抜く
• ドライブレコーダーや衝突警報機器だけに頼らず、運転者の現場判断力を鍛える教育を徹底する
安全運転とは、「自分なら大丈夫」という思い込みを捨てるところから始まります。
現場で事故を防ぐのは、機械でも標語でもなく、「日々の小さな決断の積み重ね」なのです。
4.まとめ
今回の逆走事故は、いかに取り返しのつかない結果を生むかを、私たちに痛切に教えてくれました。一人ひとりが、今すぐできる小さな備えと判断力の向上に取り組み、事故の芽を摘む努力を続けていかなければなりません。
最後に、被害に遭われた皆さまに心より哀悼の意を表するとともに、負傷された方々の一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。
株式会社カノン・エージェンシー
代表取締役 青木 淳